双恋

『双恋』を冒険心で借りてみました。1巻と2巻。
1話の出だしで「やっぱ俺ギャル系無理だ('A`)」と思いながら惰性で見てると、
2話の中盤辺りから妙に馴染んでくる。
「とうとう頭イカれちまったか…」とか思ったんですけど、
考えてみると、双子モノはコレが初めて。
ただ、新鮮かどうかっていうより、一種異様な感覚。


「うーん、なんだろう…この感じ」とか思いながらみてると、
第5話の「動き出した時間」の「あなただけは、間違えずに私の名前を呼んでくれた」
っていう菫子ちゃんの台詞で、感極まって涙まで流す始末。
その時ハッとなって原因が判明。
そうだ。
私の初恋の人は双子の妹なのだった。
そうか、それでこの台詞がグッときたわけだ。


しかし、確かに双子っていうのは色々とありそうだ、と中学生の私は思いました。
私から見れば、顔も性格も全然別の人に見えたんですけど、
周りのクラスメイトは区別がつかないらしく、しかも、人気があるのはお姉ちゃんの方。
”双子の転校生”ってだけでネタはそこら中にあるわけで、
最初の頃は私の隣の席でよく質問責めにあってました。


性格が明るかったので、笑って答えてましたけど、
横顔眺めていて、そういう話題は本当はイヤなんじゃないかなぁ、と思ったんですよね。
比べられるのは多少は慣れてるかも知れませんけど、
小さい頃から弟と比べられてきた私は、慣れっていうより嫌悪感の一色。


「転校生だし、仕方ないな」と思って、横からシャシャリ出て別方向の会話に誘導。
もともとお節介焼きな性格だったし、隣の席で見て見ぬふりはちょっとできなかった。
そしたらいつのまにかなつかれて「うーん、女って面倒臭く嫌いだけど、転校して友達もいなさそうだし…」。
「仕方ないな」とか思いつつ実は結構興味深い人間で、そのうち妙な噂も立ちだし、
しらぬ間に心を奪われ、その後10年以上も私を苦しめようとは……。


それはいいとして、冬の寒い日に決まって思い出すことがあって、
担任から授業を1時間もらって、クラスでケイドロ(ドロジュン)をやった時のこと。
ドロボウ役になったので「プール裏にでも隠れて休んでよう」とか思って歩いてると、
なんか後ろから人の足音が聞こえる。
「なにやつっ!!」と振り返ると、双子の妹の方。
ゲっ!!!
と思って全力で走りました。
「ふっ、女ごときが俺に…」とか思っても、その2ヶ月前に50m争で惨敗していたのでした。
直線では負ける。
ならば、ジグザグで逃げ切るしかない!


とジグザグに走っても、すぐに距離を縮められてジ・エンド。
県下有数の足を持つ女刑事に勝てるわけがない。
「バカか、俺は」と牢屋で頭を抱えていると、すぐに助けがやってきて脱獄成功。
途中、再度連行される友達に「同じ過ちを二度繰り返すヤツはバカ」
って声を掛けながら走ってると、遠くの方でキラりと光る目が二つ。
うっ…。
マズい……。
他の女ならふり切れるけど、アイツだけはダメだ…。


「同じ過ちを二度繰り返すヤツはバカ」。
ジグザグはダメだっ!
と思って、身を隠そう!!!
ええーっと。ええーっと。
グラウンドの中央やや北寄りだから、身を隠す場所がない…_| ̄|○


女刑事が数名集まってきた。
くっ、もはや逃げられん……。
その頃の私は身長140cmちょっとに体重は30キロ台。
自分よりも何倍も巨躯な女どもが、よってたかってか弱い男子中学生を…。
なんか、やけにニヤついてるように見える。
逮捕以外の目的がありそうだ…。
まさか貞操の危機!?
クラスメイトの女の子数名に校庭のど真ん中で辱められる?!
ちくしょー、ここまでかッ!!!
しかし、駿足の女子が「ここはいいから」とか言いながら仲間の刑事、応援の刑事をかえしている。
ほほう、女のくせにいい度胸じゃないか。
この俺を相手に一人で向かってくるなんてね…。


ゆっくり歩いてこちらに向かってくる。
しかし、動けん…。
距離10m。
「ふっふっふ」と悪魔の笑みを浮かべている。
うぬーと唸る。
ベタだが、これはもうあの手しかないだろう…。
「あっ!!!」と叫びながら人差し指を彼女の後方に向ける。
一瞬の間。
その隙に逃げる予定だった。
のだが、しぶとい。
私を見て「ふっふっふ」と不気味に笑ったまま。


そうだ。ヤツは大阪から転校してきたのだった。
ボケには慣れている。
ん?これもボケに入るのか?
とか思ってると、距離は5mもない。
両手を拡げながら、じりじりとこちらに向かってくる。


今の私ならば、間違いなくその胸に飛び込んで、
連行される際に「隙があれば逃げるもんね!」とか駄々こねて、
しかも逃げようとする小細工まで使って、腕組みで牢屋まで向かうところ。
肘に当たるおっぱいに酔いながら「将来はドロボウになろう」と心に決めることだろう。


しかし、リアル厨房のバカな私は、純粋培養のプライドの固まり。
距離3mでダッシュしようとして、タイーホ。
牢屋で抜け殻のようになってたら、救いの手が。
鬼もとい本物の婦警のような恐い顔の女子に捕まえられ、
みんな精神的にふさぎ込んでいたので、助けに来た彼は間違いなく神。
しかし、彼が助けたのはしょせんはドロボウ。
脱獄に気付いた女子数名が突進してくると、「○○が助けたんだぞ!」とか言って皆で指さし、
婦警さん数人の怒りの矛先を彼(神)に向け、何事もなかったかのように散っていったのでした。


「すまん、許せ」とか思いながら牢屋から出て10歩ほど歩いたとき、
脱獄に気付いた数名の女子の中に、ヤツがいた。
この時の心境はというと、チビマリオでスタート地点から軽快にBダッシュしたはいいが、
一番初めのクリボウを避けきれず、そのまま当たって死ぬ感じに近い。
やっと脱獄したばかりなのに…orz
もっと近くに他のドロボウはいるのに…
もっと遅い足のドロボウは山ほどいるのに…
俺が何したっていうんだよォ!


学年イチ足の速い女が追随開始。
あっという間に距離10m。
キュッと走るのを止めて、真顔で振り向く。
そしたら、彼女も足を止める。


俺「ちょっと待て」
女「なに?」
俺「なんで、俺ばっか狙うんだよ」
女「……」
俺「もう一度聞く」
女「……」
と目を逸らしたところで、ダッシュ


「ずるーい!!」という叫び声が終わらないうちに再タイーホ。
俺「ちっ」
女「『ちっ』じゃない!もう」
俺「あーあ…」
女「ほら、行くよ」
俺「もうちょっと休ませて」
女「とかいって逃げるんでしょう?」
俺「うっ…」
女「やっぱりね」
俺「でも、ほんとにちょっとタンマ。歩くのしんどい」
女「ちょっとだけだからね」
俺「でもさ、やっぱ速いよなぁ。すごいよ」
女「陸上部だしね」
俺「女子に負けたことないんだけどなぁ…。なんでだろ」
女「……」
俺「うーん、でも、楽しかった。完敗、降参ッ!」
女「……」
俺「……。さて、そろそろ牢屋行くか(笑」
女「うん(笑」


今考えてみれば、ちゃんと青春してるじゃないか、私も。
ああ、あの頃に戻りたい!!!
戻って、バカな厨の私を頃して、代わりに私が精一杯楽しんであげたい。
タイムマシン、ほしいなぁ。