気持ちの問題
本屋さんの小説コーナーで『マリア様がみてる / プレミアムブック』を手に取る。
パラパラとページをめくると、やはりアニメの設定資料集。
声優インタビューなんかあって、これはこれでおもしろいかも、
と思い始めていたとき、短編小説が目に入った。
「なんの再録だろう…」と思いながらイントロを読むと、
どうも読んだ記憶がない。
はじめて見る文章だ。
しかも、祥子が一年で、蓉子がブゥトン。
こっ、これはっ!!!!!
祥子が恐竜って(笑)
まあ、でも、確かに祐巳ちゃんは恐竜の子供だからなぁ、
祥子が恐竜でその妹の祐巳が恐竜の子供とは、
いつもながらよくできてるじゃないか。
すごいすごーい。
しかし、蓉子の妹時代も、これはこれでおもしろいなぁ。
妙に初々しかったりするし、その辺がたまらん。
江利子も2年生だし、まさに感動!!
前々薔薇さま方もイイヨイイヨー。
マジでよすぎるッ!!!イイッ!!イイッ!!!
と思ったところで、ハッと我に返る。
ニタァーっと気持ち悪い笑みを浮かべてる一人の青年。
唇の端を手で押さえながら、辺りを見回す。
午前中だからか、幸い店内にはお客さんはあまりいなくて、
こちらを見てあからさまに「キモッ!」と嫌な顔をしてる人も見あたらない。
ホッと胸をなで下ろす。
よかった…。こんな姿を他人に見られたら、とても生きてはゆけない。
大恥をかいたとしても下はコンクリート。穴を掘りたくても掘れないのだ。
まだ唇の端は上がったままなので、それを手で隠しながら急いでレジに向かったのでした。
しかし、某大手同人ショップでニタニタしてる男たちの気持ちがすごく分かった。
あれはやりたくてやってるのではない。
恐らく、無意識なのだろう。
皮膚という名の外周防壁では抑えきれない喜びの嵐によって、
顔面下部ユニットを担う口輪筋の制御プログラムが破壊されたことによるもの。
でも、それは仕方がない。
本体がシャットダウンするほどの喜びに出会えたのだから。
麦わら帽子にワンピース姿の少女が綺麗な景色を見てワァーっとなるのと同じなのである。
ただ違うのは、”少女”ではなく真冬なのに首にハンドタオルを掛けて、
目の大きな女の子がプリントされたTシャツにポスターの入った紙袋を右手に提げてる成人男性であることと、
”綺麗な景色”が裸に赤いランドセルを背負った少女がニッコリ笑っている表紙の同人誌に変わったくらい。
偏見は良くないと思う。