映画と時間軸

ラーゼフォン 多元変奏曲 初回限定版 [DVD]を借りてきて、夜中見てました。
やはりテレビ版の方がおもしろいです(全部見るのは時間かかりますけど)。
この作品は主に人間関係がおもしろいので、映画は時間の関係もあって淡泊すぎるんですよね。


ただ、テレビ版にはない中学時代のことも出てきますし、所々でテレビ版よりおもしろいです。
29歳の強い遥さんからは想像できないくらいの”お嬢ちゃん”な14歳の遥さん、
色々あったんだろうなぁ〜と作品には出てこない空白の時間を想像すると、それだけで泣けます。


んで、なんといってもエンディングが泣ける。
アニメ版にも泣かされましたが、映画版もよすぎ。
そして、エンディングのtune the rainbow (ラーゼフォン 多元変奏曲 主題歌) (通常盤)がいい!!
いつ聞いても綺麗だなぁ〜と思います。


さて、久しぶりに見たラーゼフォン
出渕監督もおっしゃってましたが、もう少女漫画の王道ですよね。
ロボットが出てきたり、主人公が男の子だったりするから男性向けと間違われやすい。


私は、要するに「エヴァの少女漫画版」、それがラーゼフォンだと思っています。
現に綾人くんの心の動きよりも、実は遥さんの心の動きの方が何倍も丁寧に描かれている。


なんで私がこんなにラーゼフォンが好きなのか、ずっと疑問だったんですけど、
少女漫画が好きだからっていうのが大きくあったんでしょう、きっと。
完成度の高い「ブルーフレンド」の回なんて、初めから終わりまで少女漫画ですしね。


考えてみると、同じ時空モノの天地無用! in LOVE2?遙かなる想い?【劇場版】 [DVD]も少女漫画だよなぁ。
時空モノで少年向けってのは、あまり聞いたことありませんから、
もしかすると女性側の心の動きには時間を超えた恋愛に連動する”何か”があるのか、
もっと言うと、時空を超えた恋愛にはヒロインの心の動きが必須なのか。


普通の恋愛と時空を越えた恋愛のどこが違うかというと、主人公もしくはヒロインの一途な感情ですよね。
浮気していたのでは成立しないし、時間軸が不安定なのに感情まで不安定になったのでは作品として成立しない。
やはり、主人公の一途さかヒロインの一途さを基軸にして物語を進める必要がある。


しかし、たくさんの美男子に囲まれフラフラしてるヒロインを陰から見守る一途な主人公ではアニメ作品は作れません。
大部分のアニメ作品において男の登場人物より女の登場人物の方が多いことから明らかなように、
やはり”男”より”綺麗なor可愛い女”を登場させた方がオタク層には受けるんです。
だから、それを実行できるのは少女漫画誌だけでして、両者の違いはやはりターゲットとなる市場の構成要素の違いとなります。


まとめると、時空を超えた恋愛にはヒロインの心の動きが必須ということになりますが、
現在を基軸にした時空モノか、それとも過去あるいは未来を基軸にした時空モノの2パターンしかない。
天地無用!in Love 2が過去とすれば、ラーゼフォンは未来ということになります。


そう判断した基準は、やはり基軸となるヒロインの存在する時間です。
天地のハルナさんは過去の人ですし、ラーゼフォンの遥さんは未来(あるいは過去)の人です。
ラーゼフォンエヴァのパクリ」とよく言われますけど、それは表面だけで、よく見れば圧倒的に天地無用!に近いんですよね。


話を戻すと、両者とも主人公が未来あるいは過去に存在しながら恋愛する。
では、主人公が現在に存在し、ヒロインが未来、あるいは過去から現在に存在する設定はどうか。
つまり、分かりやすくいうと、主人公に一途なヒロインが現在にやってくる設定となりますが、そんなことは可能なのだろうか。
ここで断っておきますが、ヒロインが最初から主人公のことを好きな場合ですよ。


例えば、未来からやってきたヒロインが主人公とゴチャゴチャやってるうちに感情が芽生える、
というようなことはいくらでもできますし、それは時空を越える恋愛ではなく「現在の恋愛」です。
なぜなら、時空を越える前にヒロインが主人公を好きでなければ時空モノでも何でもありません。


※一応、(私が考える)時空モノを定義しておきます。
主人公またはヒロインが時空を越えて恋愛する物語のことです。
もう一度書きますが”時空を越えて”です。
こうしないと混乱が生じると思ったため、念のためです。


主人公が過去や未来に移動するのは話としては簡単なんです。
理由はもちろん、ヒロインに対する一途な感情がないからです。
ここで、どちらも好きな場合はどうなるのか、という話ですけど、
ラーゼフォンではそこのところを上手く処理してまして、綾人くんの記憶を消しちゃってます。


だから、本当の両者の純愛で時空モノを作るには主人公の記憶というのは非常に邪魔になる。
そこで悪役に記憶を消させたり、頭をぶつけて記憶喪失にしちゃうんですよね。


しかし、未来or過去に存在するヒロインが時空を越える前に主人公のことを好きである場合というのは、非常に特殊になる。
それこそドラえもんの道具みたいなものがなければ不可能ということになります。


ただ、一つだけ解決法があって、それは主人公がヒロインの世界に既に存在しない場合です。
そうすれば、未来からやって来る動機として成立しますよね。
仮に死んだことにすれば、それは「あの人にもう一度会いたい」的なテーマで、視聴者も付いてき易い。
また「あの頃のあの人に会いたい」というような場合も可能となり、方法は一つですが、
脚色などによって生きてくる場合も多い。


では、ヒロインが過去から現在に来る場合はどうなのか。
主人公から見れば過去ですが、ヒロインから見れば現在であるわけで、
さらにヒロインは未来(主人公から見れば現在)に行くわけですよ。


いくら一途に主人公を愛していると言っても、未来に行く理由がない(普通は過去に行く)。
確かに、出産で死のうとしているお母さんが息子の成長した姿を見たくて…、
というのなら成立しそうですが、やはり愛といっても違う種類の愛になってしまう。


ということは、その場合は成立しないことになり、時空モノは過去あるいは未来を基軸にしたものしか成立しません。


とすれば、ヒロインは過去か未来かどちらかの選択肢しかないわけで、もう雛形は出来上がってます。
だから私は時空モノを考えるのをやめたんですけど、どうにかして過去から現在を実現できないものか、考えてみようかな、と。
だって、時空モノ大好きなんですもの。


追伸:
「過去から現在」で一つだけ思いつきました。
ヒロインが死ぬ場合です。
なるほど、そうすれば死ぬ直前に何らかの要因で(決して訪れない)「未来」へ行くこともできます。
つまり、主人公と共に歩むはずだった幸せな人生を、魔法でもドラえもんの道具でも何でもいいですけど、
何か力が働いてヒロインが死ななかった未来にヒロイン自身が行くわけです。


そうすれば、時空と呼ぶほど壮大なものでもありませんが、可能です。
ただ、雛形は既に決まってるわけで、いくら設定を変えても焼き増しにしかなりません。
主人公も、記憶が残ってるか記憶がないか(つまり、ヒロインの死を知るか知らないか)の2パターンしかありませんしね。


うーん、やはり時空モノは焼き増しにしかならないみたいですね。
※別に焼き増しが悪いっていってるのではなくて、過去に似た作品があるのなら、
同じ分野で作ってみたいなぁ〜とは個人的に思わないだけです。